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■オーギュスト×アイヴィー
■先生とビーフシチュー 続編
「アイヴィー、煙草さんとの最後の口付けは終わったかな?」
俺んちで、先生が作ったビーフシチューを食べた後。
煙草にフられるまで、と先生を待たせていた。
その間、先生はイライラする素振りもなく、普通にワインを飲んでた。
先生のワイングラスは底だけが薄っすらと赤い。
俺の銜え煙草はいつもより短くなっていた。
いい加減、これ以上は吸えない。
こんなになるまで、なんで我慢してたんだろ。
文句も言わず付き合ってくれた煙草を灰皿に寝かせる。
先生を見ると優しい顔をしてた。
先生はすっと立って、向かいの席から俺が居るロングソファへ移ってきた。
先生の手が俺の頬の上を滑って、右の耳たぶを捉える。
少し触られただけで――俺も弱過ぎる。
「ちょ、ベッドで…」
「良いよ、ここで」
「俺、まだシャワーに…」
先生の唇が俺の左耳に近付く。優しい低音に囁かれる。
「良いよ、このままで」
警報音。俺の手首の辺りから。カクンと俺の首が倒れた。
「まぢですか…」
先生が俺の腕時計を覗く。赤いランプが点ってる。
「おや。呼ばれているようだね、アイヴィー」
これは警備組織特製、腕時計型端末。
島への侵入者情報を瞬時に警備スタッフに連絡できる。
朝でも夜でも、どこに居て、何をしていても教えてくれるスグレモノ。
ああ、ホントにイイ時代になった。俺はハイテクノロジーに向かって叫ぶ。
「この野郎! 夜遅くに出歩いちゃいけませんよって先生に習わなかったのか!?」
先生は笑ってる。
「白昼堂々と出歩いてはいけませんよ、と言う悪い先生に習ったんだろうね」
俺はソファから立ち上がる。
「ゴメン、センセ。そーゆーわけで、悪い子達、ぶちのめしてくるわ」
「君の機嫌を損ねるとは。間の悪い時に来てしまったね、彼等も」
「おしりペンペンしてやる」
「アイヴィー。ひと仕事終わって、まだ元気があったら、私を起こしてくれていいよ?」
「えっ?」
「先生はね、良い子にはご褒美のシールをあげたくなるんだ」
「…何色なんですか、ソレ」
「大人用の色だよ」
「えと…じゃ、いってきます」
「うん。気をつけて。怪我をしないようにね」
車のキーを握って、螺旋階段を駆け下りる。
外に出ると、辺りは真っ暗だった。
良い子はねんねしてる時間だ。夜の潮風が冷たい。
ジャケットを羽織ってくるべきだっただろうかと思いながら、運転席に着く。
通信ボタンを押すと、オペレーターの声がした。
車内の盗聴が可能なように、この車と追憶の塔は音声通信が行える。
このオペレーターは叩き起こされて喋っているのではない。宿直当番なのだ。
「司令、お疲れ様です。場所は南部の海岸。小さなボートが三艘。十名程かと思われます」
「あいよっ」
エンジンを掛けて、夜の道路に乗る。人影はない。
オレンジの街灯が等間隔に立っているだけ。
車のナビゲートシステムには、腕時計型端末より詳細なデータが映る。
侵入者を意味する赤い点が三つ散っていた。
「やっぱ…赤、なのかな」
「司令?」
「あー、何でもない」
fin
■先生とビーフシチュー 続編
「アイヴィー、煙草さんとの最後の口付けは終わったかな?」
俺んちで、先生が作ったビーフシチューを食べた後。
煙草にフられるまで、と先生を待たせていた。
その間、先生はイライラする素振りもなく、普通にワインを飲んでた。
先生のワイングラスは底だけが薄っすらと赤い。
俺の銜え煙草はいつもより短くなっていた。
いい加減、これ以上は吸えない。
こんなになるまで、なんで我慢してたんだろ。
文句も言わず付き合ってくれた煙草を灰皿に寝かせる。
先生を見ると優しい顔をしてた。
先生はすっと立って、向かいの席から俺が居るロングソファへ移ってきた。
先生の手が俺の頬の上を滑って、右の耳たぶを捉える。
少し触られただけで――俺も弱過ぎる。
「ちょ、ベッドで…」
「良いよ、ここで」
「俺、まだシャワーに…」
先生の唇が俺の左耳に近付く。優しい低音に囁かれる。
「良いよ、このままで」
警報音。俺の手首の辺りから。カクンと俺の首が倒れた。
「まぢですか…」
先生が俺の腕時計を覗く。赤いランプが点ってる。
「おや。呼ばれているようだね、アイヴィー」
これは警備組織特製、腕時計型端末。
島への侵入者情報を瞬時に警備スタッフに連絡できる。
朝でも夜でも、どこに居て、何をしていても教えてくれるスグレモノ。
ああ、ホントにイイ時代になった。俺はハイテクノロジーに向かって叫ぶ。
「この野郎! 夜遅くに出歩いちゃいけませんよって先生に習わなかったのか!?」
先生は笑ってる。
「白昼堂々と出歩いてはいけませんよ、と言う悪い先生に習ったんだろうね」
俺はソファから立ち上がる。
「ゴメン、センセ。そーゆーわけで、悪い子達、ぶちのめしてくるわ」
「君の機嫌を損ねるとは。間の悪い時に来てしまったね、彼等も」
「おしりペンペンしてやる」
「アイヴィー。ひと仕事終わって、まだ元気があったら、私を起こしてくれていいよ?」
「えっ?」
「先生はね、良い子にはご褒美のシールをあげたくなるんだ」
「…何色なんですか、ソレ」
「大人用の色だよ」
「えと…じゃ、いってきます」
「うん。気をつけて。怪我をしないようにね」
車のキーを握って、螺旋階段を駆け下りる。
外に出ると、辺りは真っ暗だった。
良い子はねんねしてる時間だ。夜の潮風が冷たい。
ジャケットを羽織ってくるべきだっただろうかと思いながら、運転席に着く。
通信ボタンを押すと、オペレーターの声がした。
車内の盗聴が可能なように、この車と追憶の塔は音声通信が行える。
このオペレーターは叩き起こされて喋っているのではない。宿直当番なのだ。
「司令、お疲れ様です。場所は南部の海岸。小さなボートが三艘。十名程かと思われます」
「あいよっ」
エンジンを掛けて、夜の道路に乗る。人影はない。
オレンジの街灯が等間隔に立っているだけ。
車のナビゲートシステムには、腕時計型端末より詳細なデータが映る。
侵入者を意味する赤い点が三つ散っていた。
「やっぱ…赤、なのかな」
「司令?」
「あー、何でもない」
fin
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