忍者ブログ
Marginal Prince Short Story
Admin  +   Write
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

■アイヴィー5年前
囚われ人9 続編
俺にとって、第一回目の聖アルフォンソ祭が始まった。
学校の文化祭ってゆうより、島を上げての一大フェスティバルってかんじだ。
この島で、こんなに人がたくさん居る光景を見たのは初めてだ。

お仕事中に、ちらりと見えた仮装行列。
海賊扮するエドガーに肩を組まれてる王様は、ヤンだった。
長髪に金色の王冠を乗せ、マントを羽織った立派な王族衣装。
眼鏡掛けてないのに、なんか頭良さそうな王様に見える。
普段の『よれよれカーディガン、散髪をめんどくさがってる髪型、時代遅れの眼鏡』な姿より、全然イケてた。
あいつ、コンタクトのほうが絶対モテる。あ、でもガッコに女の子が居ないんだった。

皆さんがカーニバルでお楽しみの間、俺達警備のお兄さん達は、ちぎっては投げ、ちぎっては投げ。
こっちのほうも想像以上の集客率でビックリ。
そこらじゅうの人間が仮装してるもんだから、誰が誰だか解んねえし、
銃や剣を腰にぶら下げてても、仮装の小道具だと思って貰える。
これなら確かに、侵入者さん達も気軽に参加し易い。誰だ、こんな警備泣かせのお祭り考えた奴。

仮装行列のどさくさに紛れて行われる犯罪が多いって聞いてはいたけど。
ジブリールに限っては、日中、普通にお祭りに参加していて、俺達が出る幕はなかった。
奴が動き出したのは祭りの酔いも冷めた夜中。
一人で寮から抜け出し、門を越えて、街に出て行った。
俺達はジブリールの後を追い駆けたのだが。

「ったく。ジブリールの奴、どこまで夜遊びに行ったんだよ」

「見失うほうが悪いだろう、司令官?」

「だって、途中からバイク使うなんて思わねえじゃん!」

真夜中の王子様探し。
俺は戦闘能力が低いと思われるドクターとペアを組むことになった。

「こんなことなら、ジブリールのポケットにGPSチップでも入れときゃ良かったかなー」

「次に、ひじを噛もうとしても、もう遅い」

「ああ?」

「ロシアのことわざだよ。後になって悔んでも取り返しがつかないという意味だ」

「この忙しい時に、ロシア語講座開いてくれてありがとさん」

てゆうか、ひじなんて噛まねえし。
道を曲がると、誰かが飛び出してきた。

「ご、ごめんなさいっ! あっ、アイヴィー?」

ぶつかったのは、赤っぽい髪の男。今日は髪を結んでない。
マイクと親しかった、バー店員だ。

「ジェフ……な、何してんの、こんなとこで」

「ベルが帰って来ないんだ! だから俺、探しに」

「ベル? ああ、あのにゃんこか。どっかお散歩してるだけだろ?」

「俺も最初はそう思ったんだけど、それからもう何日も顔を見ないんだ」

ジェフは右手で、自分の左手首に触れた。
不安を抑えつけるように、何重ものブレスレットごと握っていた。

「こんなに長い間、帰って来ないなんてことなかったし。
ベル、おじいちゃんくらいの年だからさ、もしかして……」

「待て待て。そう悪いほうに考えんなって」

「ベルはマイクが置いていった猫なんだ。ベルまで店に来なくなったら、やだよ」

俺の腕時計型端末が赤く光った。

「ヤベッ」

手を背中の後ろに隠す。

「どうしたの、アイヴィー」

「あー、えっと、アラームだよ、アラーム! じゃあ、ちょっと急いでるから、またなっ」


端末にナビゲートされて着いた場所は海に近い公園。
ランプ型の街灯に囲まれていて、レトロな雰囲気がある。
夜中の公園に、四つの人影があった。二人ずつ対峙して立っている。
オレンジ街灯に照らされて、やっと顔が判別できる。

一人は、浅黒い肌と漆黒の髪。ジブリールだ。
向かい合ってるのは、アブル国王陛下、ジブリールの親父さんだった。
黒い長髪、肌は子息よりも濃い褐色で皺も見える。
砂漠の国の王子と王は、傍らに一人ずつ黒服の男を連れている。

彼等に気付かれないように、ドクターを連れて木の茂みに隠れる。
公園内が一望できる、そのベストポジションには、既にクロイツが居た。
余りにも冷たい眼差しで出迎えられたので、俺は先に小声で謝った。

「ゴメン。遅くなった。今、どんな様子?」

「お静かに。彼等の声が聞こえません」

「……ハイ」

耳を澄ます。少し冷たい潮風の中、苛立ったジブリールの声が聞こえてきた。

「つまらん昔話はもういい。何しに来た」

「父親が息子の文化祭を見に来てはいけないのか?」

「そんなもの、ただの口実だろう」

「今年は、お前にどうしても伝えたいことがあってな」

「伝えたいこと?」

「ジブリール、お前を私の跡継ぎにしたい」

「冗談だろ。兄貴二人を差し置いて?」

「ああ。あいつらは欲だけ強くて、頭は弱いからな。私はお前を一番頼りにしてる」

「嘘だ」

「嘘なものか。だから、お前だけ、聖アルフォンソ学院に入れた。
誰の手からも守りたかったからさ。お前こそ、私の後継者に相応しい。
お前のその名、私がどんな想いを込めたと思う?」

「名前だと……」

「アラビア語を忘れたか? ジブリールとは、最高位の天使ガブリエル。
イスラム教の開祖ムハンマドに、聖典コーランを与えた大天使だ。
その名の通り、お前は最高位に立ち、皆を導く為、生まれた者」

「無駄だ、俺に何を言おうと。貴方の言葉は、もう二度と信じないと決めたんだ」

「お前は昔から強情だったな。すぐには信じられないのも無理はない。
だから、うちに帰ってゆっくり話したい。祭りも終わったんだ。少し休みを取って、一度帰って来ないか?」

「俺はもう、貴方のところに帰るつもりはない」

「どうしてだ、ジブリール」

「じゃあ教えてくれ。何故この場に、エルヴィンを連れてきた?」

「用心棒さ。この島は危険な犯罪者も度々やってくるそうだから。私とお前を守る為のな」


俺は、父と子を見たまま、隣の男に尋ねる。

「ねえ、ドクターってさ、ヒトがウソ吐いてるかどうかも解る?」

「100%とは言えないが。今、この場合なら解るよ。99%間違いない」

「あのお父さんの言ってること、ホント? ウソ?」

「嘘だ」

「クロイツは? どう思う?」

「嘘だと思います」

「うん。俺もそう思うわ」

俺は副司令官に指示する。

「クロイツ。ドクターとここに居てくれる?」

「司令、お一人では」

「クロイツも、俺の腕がどんなモンか、ホントは知りたいでしょ?
この司令官ダメだなと思ったら、助けに来てちょ?」


砂漠の王は従者に命じた。

「エルヴィン、ジブリールを連れて帰るぞ」

「仰せのままに、アブル様」

ジブリールも従者に命じた。

「ファビアン、国王にお引き取り願え」

「仰せのままに、ジブリール様」

従者は、そう言うと仄かに笑った。
向こうから、国王の従者がやってくる。
従者同士は顔を見合わせる。二人の顔はよく似ていて、兄弟のように見えた。
次の瞬間、ジブリールの従者はきびすを返し、主人の右腕を掴んだ。
すかさず左腕を、国王の従者が押さえる。両腕を拘束された王子は鋭い目で睨み付けた。

「ファビアン。貴様、俺を騙したのか」

「殿下は何か勘違いをしておいでのようだ。私は、貴方の味方になると申し上げた」

「なら、何故」

「これが殿下の為だからです。後に貴方にも解って頂ける筈」

「ファビアン、離せ!」

父親が薄笑いを浮かべながら、

「連れて行け、ファビアン」

「仰せのままに、アブル様」

「ねえ。王子様が離せって言ってんだから、離してあげたら? オジサン達」

俺が出ていくと、王様は余裕ありげに笑った。

「ネズミが居たか」

「チューチュー、ってこんなイケメンのネズミが居るかよ。な、ジブリール?」

王子様が俺を見つめる。

「何故、ドライバーがこんなところに」

「迎えに来たんだよ、夜中に出歩いてる校則違反者が居るっていうからさ?」

「俺に構うな! あいつらは暗殺者だ!」

「やっぱりねえ。どうりで黒服がお似合いだと思った」

「殺されたいのか!? さっさと逃げろ!」

「んなワケに行くかよ。マージナルプリンスを置いて逃げたら、クビになっちゃうだろ?」

ファビアンと呼ばれた黒服の男が、俺を見て、おや、と微笑んだ。

「貴方は、以前にもお会いしましたね、金髪のネズミさん?」

「何それ? 口説き文句にしても古過ぎない?」

「お元気そうで何よりです、二年振りでしょうか?」

「だからさ、あんた、誰と勘違い……」

「仕留めたかと思っていましたが。しぶといんですね、この島のネズミは」


PR
カレンダー
05 2026/06 07
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
ブログ内検索
キャラ名、CP名などで作品検索可
アーカイブ
カウンター
バーコード
material by bee  /  web*citron
忍者ブログ [PR]